九州場所と白鵬2016-11-18

 さて、九州場所。
 かつて相撲は東北以北の北の出身者が圧倒的に多く、特に北海道、青森出身力士の独壇場だったが、今は幕内では北海道の関取はゼロ、青森も宝富士だけ。
 それに比して、九州出身力士は隆盛を誇っている。わが嘉風は大分県。福岡が琴奨菊に松鳳山、熊本が佐田の海に正代、鹿児島が千代鳳と、幕内だけでも6人もいる。九州も昔から相撲どころではあるけれど、特に今は大いに盛り上がっている。それは館内の声援を聞いていても感じるだろう。これらの力士への応援は毎日すごい。
 日本人力士だから応援をするというのは嫌な感じなのに、地元の力士を応援するというと不快感がなくなるのは、不思議かもしれないが、全然不思議ではない。サッカーで言えば、日本代表よりも地元のクラブの勝利のほうが大切と感じるサポーターのようなもの。非日常で憂さを晴らすのではなく、日常の一コマとして、労力をかけて地道に応援するというか。
 その感じは、白鵬に対する声援を聞いているとわかる。国技館だと、アンチ白鵬がにわかに増え、白鵬じゃない日本人力士を応援するという空気があるが、テレビで館内の声援を聞いている限り、九州場所ではそんな雰囲気はあまりなさそうに感じる。むしろ、白鵬を素直に応援している印象がある。実際、白鵬は九州場所で6年連続優勝するなど、めっぽう相性がいいのだ。
 そんな九州場所で、大記録の1000勝を達成できたのも、白鵬のよく口にする相撲の神様の計らいかもしれない。当日は白鵬1000勝を待ち望む観客が目立ち、大いに沸いた。白鵬もとても率直に喜びを表していた。大鵬の32回の優勝を越えるときは、ピリピリになって孤独感を全面に漂わせていたが、この1000勝は笑顔でよかった。もっとも、九州場所のアイドルでありヒーローだった魁皇の1047勝という前人未到の記録を九州で越えるとなると、複雑かもしれないが。
 その魁皇だった現・浅香山親方の、白鵬1000勝に対するコメントも、素晴らしかった。「力強い相撲だった。自分は長く相撲を取っただけで地位も年齢も違うから、自分の記録とは比べることはできないし、比べるのは申し訳ないくらい。白鵬はまだまだ若いし、通過点だろう」(NHKニュース)。あんな大記録を打ち立てた人なのにこの謙虚さ。魁皇の人柄が滲み出ていて、なんで九州場所で魁皇があんな爆発的人気を誇ったのか、よくわかる。
 6日目には、この場所の台風の目となっている玉鷲と遠藤が、それぞれ全勝の豪栄道と白鵬を破るという波乱が起きている。綱取りの豪栄道にとって、私はこれは悪くないと思う。横綱にとって必要なのは、負けないこと。勝つこと以上に負けないこと。たとえ負けても、引きずらずに翌日には立て直して、再び負けないでいること。これができないと、綱を張り続けるのは難しい。だから、下位力士に一敗は痛いけれど、むしろ横綱たる資格があるかどうかを測るにはいい展開だろう。ここを乗り越えての優勝ならば、文句なく横綱になれると思っている。大関陣の中でも最も情けなく、優勝争いをすることも期待されず、事実無関係のままだった豪栄道は、あの屈辱の日々から成長したのだなあと感じさせる、強くて揺るぎない相撲を取り続けていて、私の評価もすっかり反転した。
 遠藤が白鵬を破る日はいつか来ると思っていたけれど、怪我以来、それは遠のいたと残念に感じていた。それを引き戻した遠藤、楽しみすぎる。ひたむきに正攻法でとても相撲がうまい遠藤は、どこか貴乃花に似ている。勝ったときの相撲の美しさなんか、貴を彷彿とさせる。2年前は照ノ富士と遠藤が横綱、大関としてライバルになると思っていたので、照ノ富士にも早く復活してほしい。

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